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大阪高等裁判所 昭和52年(う)1319号 判決 1978年7月13日

被告人 松浦稔

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役三月に処する。

ただしこの裁判の確定した日から一年間右刑の執行を猶予する。

原審における訴訟費用中、証人大谷弘二、同栗須義久、同田中末太郎、同天野格、同岡本洋光に支給した分全部及び同許必達、同村上竹一(ただし、第五・六回公判分)、同矢部晴三、同蘇英年、同森本忠夫、同飛渡和敏、同川上健次、同内野三二、同佐竹嘉明、同長畑文男、同黒沢好雄、同松田博邦に支給した分の各二分の一並に当審における訴訟費用の二分の一を、被告人の負担とする。

本件公訴事実中業務上横領の点につき、被告人は無罪。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人尾崎亀太郎作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。

一  控訴趣意一の(一)(原判示第一事実に関する事実誤認の主張)について

論旨は、被告人が日本自動車運転士労働組合兵庫県本部(以下自運労という)の代表者執行委員長として西日本交通株式会社(以下西日本交通という)から合計八万円の金員の交付を受けた趣旨は、自運労が西日本交通の本来行うべき賃金支払事務を代行処理したことの対価であるのに、原判決がこれを自運労から西日本交通に運転手を供給したことの対価であるとして被告人の右所為を有料の労働者供給事業を行つたものであると認定したのは事実の誤認であるというにある。

そこで、所論にかんがみ記録を調査し、まず、自運労が所属組合員に対してした立替金の交付が西日本交通の賃金支払事務の代行であつたか否かを検討するに、原判決挙示の関係証拠のほか原審第七回公判調書中証人田中実の供述部分、被告人の検察官に対する昭和四六年五月二四日付供述調書、原審第二一回公判調書中被告人の供述部分、押収してある領収証二枚(大阪高裁昭和五二年押第四九二号の三一及び三二)並に同賃金計算書綴二冊(同押号の三三及び三四)をも総合すれば、(1)自運労は、昭和四五年四月ごろから西日本交通に対し所属組合員を運転手として供給しはじめ、当初西日本交通は、労賃は日払いでなければならない旨の自運労の方針に従い、供給された運転手に対し賃金を日給で支払つていたこと、しかし、この賃金支払方法は元々法令によつて禁止されていたうえ、陸運事務所の行政指導ないし取締りが強化されたため、西日本交通としては賃金の日払いをすることができない状況に立ち至つたこと、そこで被告人は西日本交通と協議のうえ、西日本交通においては、供給された運転手の賃金計算書のみを毎日自運労に送付し、賃金は前渡金の形で月に数回被告人宛に送金し、賃金総額と送金総額の過不足は月末に清算することとし、他方自運労においては、生活費に困る組合員に対しその申出により立替金を交付し、西日本交通との関係では右同様月末に過不足の清算をすることとしたこと、そしてこの結果自運労内部において右立替金交付事務などを生ずるに至つたこと、(2)西日本交通は、昭和四五年九月分(同年八月二一日から九月二〇日まで)の賃金など合計一一〇万円を、勤務明けの運転手に託する方法で四回、被告人個人名義及び自運労執行委員長松浦稔名義の各銀行普通預金口座に振り込む方法で二回の合計六回に分けて、また同年一〇月分(同年九月二一日から一〇月二〇日まで)の賃金など合計八〇万円を、右各銀行預金口座に振り込む方法で三回に分けて、いずれも被告人に対し送金したこと、右送金はいずれの場合も一〇万円単位の端数のない金額でなされており、また右各銀行預金口座は、西日本交通からの送金用にのみ利用されているものではなく、他の会社などからの振込送金用などにも使用されていて、西日本交通から振込送金された金員は他の金員と一体となり特定性を失うに至るものであつたこと(なお、右九月分一一〇万円のうち一〇六万円が、同一〇月分のうち七六万円がいずれも賃金として送金されたものであり、残りの四万円づつ合計八万円が本件で運転手供給の対価であるか否かが問題となつている金員である)、(3)自運労が西日本交通に供給した組合員に立替金として交付するのは、端数のない千円単位又は万円単位の金額であつて、当該組合員が西日本交通から支払われるべき日給額とは必ずしも一致せず、自運労としては、右日給額内は勿論であるが、組合員の申出によつては右日給額を超える金額の立替金を交付することもあり、また西日本交通からの送金分を立替金として交付し尽した後であつても、組合員に対する立替金の交付を継続した結果、西日本交通に対する関係で自運労の赤字になつたこともあり、更に組合員から申出がなければ毎日立替金の交付をしたわけでもないことの各事実が認められ、右(1)ないし(3)の自運労が組合員に立替金の交付をするに至つた経緯、西日本交通から被告人への送金の実態及び自運労内部における組合員への立替金交付の実情によれば、自運労の組合員に対する立替金の交付は、西日本交通の賃金支払としての形式・内容を備えてはおらず、むしろこれは、賃金の日払を運動方針として掲げている自運労が、右日払のできなくなつた西日本交通に対し所属組合員を運転手として供給し続けたことによつて惹起した矛盾を解決するため考え出した方法であり、このために生じた立替金交付事務などは自運労自身の事務であるというべきである。

なるほど、労働基準法二四条によれば賃金は労働者に直接支払わなければならない旨定められているけれども、前記(2)・(3)の西日本交通から被告人への送金及び自運労内部における立替金交付の各実態に照すと、西日本交通は右法条を遵守していなかつたとみるべきであり、同法条を根拠として自運労の立替金交付を西日本交通の賃金支払事務の代行とすることは相当でない。

よつて次に、前記八万円の金員の性質について検討するに、前掲各証拠によれば、右立替金交付事務は、当初自運労の執行委員などが非番の日などに処理していたが、繁忙すぎたので、被告人は西日本交通と協議のうえ、自運労において右事務の処理に当る事務員一名を雇い入れ、他方西日本交通において右事務員の賃金として一か月四万円を自運労に交付することとし、その結果前記のとおり二か月分合計八万円の金員が被告人に交付されたこと、なお西日本交通としては、自運労内部の前記事務処理の繁忙が同組合から運転手の供給を受けることの障害となる点にかんがみ、右金員を交付することによつて右事務処理の繁忙が軽減され、その結果運転手の供給数が増加することを期待していたのであるが、昭和四五年一一月以降は自運労からの運転手の供給数が減少するに至つたため、右金員を交付するのを中止し、他方自運労執行委員長の被告人においても、右金員の交付が中止された関係上昭和四六年二月になつて西日本交通に運転手を供給するのをやめたこと、更に右金八万円の使途をみてみると、一か月四万円という低額の賃金では事務員を雇い入れることができなかつたため、依然として執行委員田中実などが立替金交付の事務処理を続け、第一回目九月分の四万円は右田中が被告人の指示に従い組合の資金の中から右金額を労務賃として受け取つたが、第二回目一〇月分の四万円については、被告人の指示にもかかわらず、組合資金のやりくりがつかなかつたため、右田中において労務賃として受け取ることができなかつたものであつて、結局自運労の他の費用に充てられたことが認められる。この事実に前記の立替金交付が自運労自身の事務であることを併せ考えると、本件八万円の金員は結局自運労から西日本交通への運転手供給を継続するために交付されたもの即ち右運転手供給の対価にほかならないというべきである。

従つて、原判決が、判示第一事実に関する説示中に当裁判所の前記認定と見解を異にする部分はあるけれども、これは判決に影響を及ぼすことが明かな事実の誤認というを得ないから、本件八万円の金員を前認定と同趣旨であると判断し、被告人の本件所為を有料の労働者供給事業を行つたものであると認定したのは正当であつて所論のような事実誤認のかどはない。論旨は理由がない。

二  控訴趣意一の(二)の(1)(原判示第二の一の事実に関する事実誤認の主張)について

論旨は、被告人が運送収入金在中の本件納金袋を持ち去つたのは、被告人のユニヴアーサルタクシー株式会社(以下単に会社という)に対する未払賃金債権回収のためであり、会社の許必達社長はこれを黙示的に承諾していたものであつて、これを窃取したのでないのに、原判決が被告人の右所為を窃盗罪にあたると認定したのは事実誤認であるというにある。

そこで所論にかんがみ記録を調査して検討するに、原判決挙示の関係証拠のほか押収してある布製ジツパー付納金袋一個(大阪高裁昭和五二年押第四九二号の二三)をも総合すれば、なるほど被告人は、本件納金袋を持ち去つた昭和四六年一月三〇日当時、会社に対して未払賃金債権がある旨主張していたのであるが、その額を明示した形跡もなく、これに対し会社では被告人に未払賃金があると認めていなかつたことが認定できるから、被告人が本件納金袋とこれに在中していた運送収入金を持ち去るのを、許必達社長が被告人の未払賃金債権の回収行為として肯認するとはとうてい考えられないし、また在中金額を見ることなく納金袋ごと持ち去るという態様に照しても未払賃金債権の回収行為とは評価しがたく、その他の点は原判決が弁護人の主張に対する判断二の1項で適切に判示しているとおりであつて、原判決が被告人の本件所為を窃盗罪にあたると認定したのは正当であつて、所論のような事実の誤認のかどはない。論旨は理由がない。

三  控訴趣意一の(二)の(2)(原判示第二の二の事実に関する事実誤認の主張)について

論旨は、被告人が運送収入金を会社に納入しなかつたのは、被告人の会社に対する未払賃金債権と会社の被告人に対する運送収入金交付債権とを相殺したものであり、右相殺は民事上も刑事上も適法であるのに、原判決が被告人の右所為を業務上横領罪にあたると認定したのは事実誤認であるというにある。

そこで所論にかんがみ記録を調査して検討するに、原判決挙示の各証拠によれば、原判決摘示の事実中「ほしいままに、自己の用途に費消する目的で着服横領し」とある部分を除くその余の事実が認められ、関係証拠のほか被告人の検察官に対する昭和四六年四月二日付及び司法警察員に対する同年三月二七日付、四月一日付各供述調書を総合すれば、被告人は会社に納入しなかつた運送収入金合計二五万七六〇〇円を自己の用途に費消する目的で領得した事実が認められる。

ところで、被告人が運送収入金を会社に納入せずこれを自己の用途に費消する目的で領得した行為が横領罪にあたるか否かをみるに、前掲証拠のほか米田軍平ほか一名作成の仮処分命令申請書写、神戸地方裁判所作成の仮処分事件判決謄本、大阪高等裁判所作成の和解調書正本、被告人の司法警察員に対する同年三月二四日付、同月二八日付各供述調書、原審第一三回・一五回・二五回公判調書中被告人の各供述部分及び押収してある欠勤休暇早退届二枚(大阪高裁昭和五二年押第四九二号の二七及び二八)を総合すれば、被告人は、昭和四〇年八月六日勤務不良、職場放棄、会社の名誉信用の毀損を理由に解雇されたため、昭和四一年二月一九日神戸地方裁判所に対し地位保全等仮処分を申請し、同裁判所は、昭和四四年四月一一日、前記解雇が不当労働行為で無効であるとして、会社に対し、被告人を従業員として取扱い、かつ昭和四四年四月一一日から一か月金二万四、〇九〇円の割合による金員を毎月末日限り被告人に仮に支払えとの判決をしたこと、なお右判決は、被告人が解雇されてから右判決までの四四か月余の解雇期間中の一か月金二万四、〇九〇円の割合による賃金(合計額は金一〇五万余円になる)については右仮払いを認めなかつたが、その理由は、被告人が右解雇期間中に他社でタクシー運転手のアルバイトをして相当額の収入を得ていたことや、被告人の妻もまたアルバイトをして生活を支えていたことなどに照し仮払いの必要性がないというものであつて、論理上は被告人に右解雇期間中についても賃金債権があることを当然の前提とするものであつたこと、右判決に対し、会社は、被告人に対する解雇は有効であつたと主張して大阪高等裁判所に控訴する一方、被告人に対してはその就労要求を拒否して前記判決後の毎月金二万四、〇九〇円の賃金を交付し続けたこと、しかし、右判決から一年七か月後の昭和四五年一一月一一日に他の六名の組合員に対する解雇を無効とする別の事件の判決が出されたため、会社はその者らを就労させる都合上被告人もまた就労させることとし、同月一三日から被告人は就労するに至つたこと、ところが被告人は、その直後の同月一七日に、同日と翌一八日の二日間の有給休暇請求書を、またそのころ同月一九日から向う五八日間の同請求書をいずれも所属営業所の村上所長宛提出して就労せず、他方同所長は、右有給休暇請求につき、六〇日もの長期間の有給休暇がある筈がないとして適法な請求と認めず、自己の手もとに保留したまま社長に渡すことをせず、また会社としても右請求を適法なものとして扱わず、無断欠勤扱いとし、従つて被告人不就労の間の賃金の支払をしなかつたこと、そこで被告人は、前記解雇期間中及び有給休暇中の未払賃金などを回収する方法として、就労して客から受領する運送収入金と右未払賃金などを相殺することを考え、昭和四六年一月二三日から同年三月二三日までの間二一回にわたり就労したうえ、就労日の終業時に会社に提出する運転日報に「未払賃金利息相殺」ないし「但し未払賃金利息也」などと記載したメモを添付して提出し、運送収入金は会社に納入しなかつたこと、なお被告人の地位保全等仮処分申請事件の控訴審は、本件後の昭和四六年七月二二日、会社と被告人の間において、本件業務上横領被告事件とは関係がないものとする旨の条件の下に訴訟上の和解をし解決をみたことが認められる。

右の事実によれば、被告人が運送収入金を会社に納入しなかつた理由は、運送収入金と未払賃金及びその利息とを相殺したためであることが明かであるので、次に右相殺の適否について検討するに、前記有給休暇の点はさておき、解雇期間中の一か月二万四、〇九〇円の割合による未払賃金債権(その合計額は前記のとおり金一〇五万余円に及ぶ)は、会社との間においてその存否に争いがあつたけれども、単に被告人が主観的にその存在を信じているだけにとどまらず、会社が控訴したため未確定の段階にあるとはいえ第一審で勝訴した前記仮処分事件の判決理由に照し、客観的にも前記未払賃金債権の存在の蓋然性は当時相当程度に大きいものがあつたと推認される(なお、使用者の責に帰すべき事由により解雇された労働者が解雇期間中に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することができるとしても、本件では被告人が解雇期間中に得た利得額を認定するに足る証拠がなく、また右控除の限度が労働基準法二六条の趣旨に照し平均賃金の四割の範囲内にとどめられるべきことを考慮すると、前記一〇五万余円の未払賃金は最大限の四割の控除をしても六三万余円の未払賃金として残存する計算になり、これは被告人が相殺に供した運送収入金の総額二五万七、六〇〇円よりも多い)。

ところで、民法上は、債権の存否に争いがあつても相殺することを妨げず、自働債権を「未払賃金及びその利息」と特定すれば、その発生の日時、発生原因、弁済期はもとより数額を明示することも必要ではないし、また運送収入金の性質については、必ずしも客から受領した金員そのものを即ちこれを特定物として会社に納入するまでの必要はなく、運送収入金と同額の金員を会社に納入すれば足りるものと解され、更に被告人と会社との間において運送収入金を受働債権とする相殺をしない旨の合意があつたと認むべき証拠はなく、その他の相殺の要件事実を検討してみても、被告人のした前記相殺を不適法ということはできない。

なるほど、会社において被告人の未払賃金債権の存在を争うかぎり、民事上の紛争が残り、その紛争において被告人の主張が容れられない場合は、被告人において本件運送収入金を会社に納入せざるを得ない結果となるけれども、これは存否に争いのある債権でも相殺に供することを妨げないことから当然に生じる結果であつて、このことをもつて前記相殺の適否を左右することはできないし、また原判決の説示するように、当時会社が、食事代などやむをえない業務上最少限の金額についてのみ運送収入金からの一時流用を認め、一般的な前借については運送収入金を直接流用してその分を差引き会社に納入することは認めていなかつた事実があるけれども、前借は法的には会社と従業員の合意によつて成立する消費貸借契約であるから、会社がこれを容認しない限り適法な前借が成立しえないものであるのに対し、相殺は一方的な意思表示によつて成立し、会社の承諾の要否を問わない制度であるから、双方の法的性質を異にする以上、前記前借方法に関する事実は本件相殺の適否を左右するものではない。

以上要するに、被告人は会社に対する未払賃金及びその利息債権と相殺する旨の意思表示をして本件運送収入金を会社に納入しなかつたものであり、かつ相殺の要件事実に照し右意思表示を不適法なものと認めることができないから、被告人が相殺の意思表示をして運送収入金を会社に納入せずこれを自己の用途に費消する目的で領得したことをもつて直ちに不法領得の意思の実現行為と認めることには合理的な疑いが残るというべきであつて、被告人に対する公訴事実中業務上横領の点は結局その証明が不十分であるに帰し無罪である。よつて、原判決が右相殺についての判断を誤り被告人の右所為をもつて不法領得の意思の発現行為と判定し原判示のごとく業務上横領罪の成立を認めたことは、判決に影響を及ぼすことが明かな事実の誤認であるといわねばならない。論旨は理由がある。

四  よつて、その余の控訴趣意につき判断するまでもなく、刑事訴訟法三九七条一項、三八二条により、右無罪部分とその余の有罪部分とを刑法四五条前段、四七条による併合罪処理をした原判決はその全部を破棄することとし、同法四〇〇条但書により当裁判所において更に裁判することとし、本件公訴事実中「被告人は、神戸市葺合区御幸通一丁目九番地ユニヴアーサルタクシー株式会社の自動車運転手として同会社岩屋営業所に勤務しているものであるが、客の輸送、客からの運賃受領とその保管等の業務に従事していたものであるところ、別表(編注略)記載のとおり、昭和四六年一月二三日から同年三月二三日までの間、前後二一回に亘り同会社のタクシーを運転して客の輸送にあたり、その代金として現金合計二五万七、六〇〇円の運送収入金を客から受け取り同会社のため保管中、その都度、同市灘区岩屋北町三丁目三の二〇所在同会社岩屋営業所に右金員を納入せず自己の用途に費消する目的で着服横領したものである」という業務上横領罪の訴因は前記三で説示したとおり犯罪の証明が不十分であるから、刑事訴訟法三三六条により被告人に対し無罪の言渡をし、原判決挙示の関係各証拠によつて認められる原判示第一及び第二の一の各事実に法令を適用すると、被告人の原判示第一の所為は包括して職業安定法六四条五号に、原判示第二の一の所為は刑法二三五条にそれぞれ該当するが、原判示第一の罪につき所定刑中懲役刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条により重い原判示第二の一の罪の刑に同法四七条但書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人を懲役三月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から一年間右の刑の執行を猶予し、訴訟費用のうち主文掲記の分は刑事訴訟法一八一条一項本文によりこれを被告人に負担させることとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 滝川春雄 吉川寛吾 重吉孝一郎)

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